世界挑戦と駅伝戴冠を両立するトヨタ自動車「さまざまな個性が競い合い切磋琢磨できるチームになってきた」(佐藤敏信総監督)
【トヨタ自動車】世界挑戦と駅伝戴冠の「二兎」を追う常勝軍団。鉄紺のノウハウを支える酸素テクノロジーの深淵
2024年元日のニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)で、8年ぶり4度目の優勝を飾ったトヨタ自動車陸上長距離部。2008年の佐藤敏信総監督就任以来、チームが掲げ続けてきた「世界への挑戦」と「駅伝優勝」の両立という理念が、熊本剛監督へと引き継がれ、最高のかたちで結実しました。
この「二兎」を追う過酷な挑戦を支えているのは、多様化する選手たちの個性を活かすチームビルディングと、最新の科学的アプローチです。なかでも、日本気圧バルク工業の酸素ルーム**「O2Room®」**を駆使した「低圧低酸素トレーニング」と「高気圧酸素リカバリー」のノウハウは、チームの躍進に欠かせない「武器」となっています。
1. 盤石の布陣で奪還した駅伝日本一
今回の優勝は、エースの太田智樹選手、スーパールーキーの田澤廉選手による前半のリードを、ベテランの田中秀幸選手が5区で決定づけるという、まさに「思い通り」の展開でした。 佐藤総監督は、実業団選手として駅伝の結果を求められる責任を認めつつも、「その両立ができる強さを身につけないことには世界と戦えない」と断言します。個々の拠点が駒澤大学や中央大学、あるいは海外合宿と多様化するなかで、チームとしてのライバル関係を維持し、切磋琢磨する環境が整っています。
2. 高地トレーニングを「日常」に変える低圧低酸素ルーム
トヨタ自動車が2016年に導入した日本気圧バルク工業の**「O2Room®」**は、寮内にいながらにして高地環境を再現できる画期的な設備です。
「低圧」へのこだわり: 一般的な「常圧低酸素(窒素注入)」とは異なり、気圧そのものを下げる「低圧低酸素」は、実際の高地と全く同じ負荷を身体にかけられます。
順化の効率化: 熊本監督は、米国アルバカーキ等での高地合宿前に、このルームで「高地順化」を行うことで、現地入り直後からのスムーズな練習開始を可能にしています。
故障時の救世主: 右臀部の故障に苦しんだ西山和弥選手は、まったく走れなかった期間中、低圧低酸素ルーム内でのバイク漕ぎを毎日実施。心肺機能を維持したまま、走り出し後のスムーズな復帰につなげました。
3. トップランナーたちの独自活用術:服部・西山兄弟のルーティン
主将の服部勇馬選手をはじめ、世界を知るトップランナーたちは、自分なりの「O2Room®」活用法を確立しています。
服部勇馬選手(暑熱対策と追い込み): ルーム内の気温を上げ、マラソンの暑熱対策として利用するほか、最大心拍数に近い強度でのバイクインターバルを行い、出遅れたコンディションを短期間で引き上げています。
西山雄介選手(徹底したリカバリー): パリ五輪代表選考に向けて過酷な練習を課した西山選手は、ポイント練習後に「最低90分」の高気圧酸素ルーム入室を自らに課しています。筋肉を柔らかく保ち、怪我を未然に防ぐことが、2時間6分台という自己ベスト更新を支えました。
4. 科学的根拠に基づいた「安心・安全」の運用
日本気圧バルク工業の製品は、複数の大学や病院との共同研究によるエビデンスがあり、トヨタ自動車のようなトップチームが最も重視する「安全性」において絶大な信頼を得ています。 大型のルーム内にはトレッドミル2台、バイク2台が設置され、選手たちはパルスオキシメーターで血中酸素飽和度(SpO2)を測定しながら、極めて緻密にコントロールされたトレーニングを行っています。
5. 「その1秒」の先へ――新戦力と共に目指す第2章
2024年度、チームには鈴木芽吹選手(駒大卒)、吉居大和選手(中大卒)といった、学生界を席巻した超大物ルーキーたちが加入しました。 佐藤総監督は「今の選手たちはそれぞれのやり方でO2Room®を活用している。このノウハウは新人にも教えていく」と語ります。拠点が離れていても、あるいはトレーニング方法が異なっていても、「世界を目指し、駅伝でも勝つ」という軸がぶれることはありません。
トヨタ自動車のゼブラカラーが次に狙うのは、パリ、そしてその先のロサンゼルス。酸素テクノロジーと伝統の融合が、日本の長距離界をさらなる高みへと押し上げていきます。
トヨタ自動車 陸上長距離部 日本気圧バルク工業「O2Room®」導入(低圧低酸素・高気圧酸素) ※この記事は『月刊陸上競技』2024年5月号を基に構成しています。

